オランダの会計ソフト Gekko が何かとCoolに思える理由2019/Jul/16

オランダでフリーランスビザを取得して半年、2017年の年末の頃。

「なんとかして自分で会計管理がしたい」

日本ではfreeeを利用していたけれど、きっと近いものがあるはずだ!
そう奮起して、会計アプリを探していた自分。
“Wave”、”Xero”、オランダの会計士さんの間ではポピュラーらしい ”Kleisteen”・・・
いくつかを試してみた中で、たまたま出会ったのが Gekko という会計ソフトです。

堅苦しいイメージの「会計」ソフトにしては、ゆるい?外観。
1ユーザー月額 10ユーロ(2ユーザー目からは1人 5ユーロの追加)、初期費用ゼロ、機能制限はありますが無料でも使えます。
手軽な価格ですが使ってみると色々よくできているのです。

それにしても妙に惹かれるのはなぜなのだろうと考えていたのですが・・・
「フィードバックはいつでも歓迎するよ」とのことだったので、実際にオフィスを訪問して話を聞いてきました。
その中でなるほど色々腑に落ちたところがあったので書いてみたいと思います。

最初に:会計ソフト Gekko の機能をざっとまとめると・・・

  • 売上管理:見積書、請求書の作成から入金管理まで
  • 経費の管理:領収書、インボイスの画像ファイル保存、経費項目別に仕分けての入力
  • VAT(付加価値税、いわゆる消費税)の申告書類の作成

上記の主機能を補佐する機能として、
「顧客、業務パートナー管理」、
「時間単位で働く人のためのワークタイム管理」、
「移動経路と費用の管理」
などがあります。

Gekkoのここが助かる

多言語・多通貨に対応

明らかにグローバルなサービス以外ではまだまだオランダ語のみのサイトは多いです。
こういったサービスでオランダ語か英語かを選べるというのはありがたい限り。

そして通貨。
税務処理的にはもちろんユーロでなければなりませんが、請求時には円やドルを含む30種以上の通貨を選んで請求書が作成できます。
日本のお客様、お仕事が多い ”無理やり移住者” の自分達にとっては
「日本円で請求書を出して、ユーロに換算した金額を計上できる」
この機能は不可欠です。
(※為替レートは都度指定可能です。請求時と入金時のレートの違いによって多少の損得は発生します。どう処理するべきか?はそのうち会計処理Tipsとしてまとめたいと思います)

また、地味に助かるのが
「請求書PDF、請求書添付のメールが日本語で出せる」ということ。
日本語のような言語はそもそも使えないこと、文字化けなどの問題が起こることはよくあるので・・・PDFの書類が作れてメールでの請求書送信が日本語でできる、のはとても嬉しかったりします。

とにかくシンプル + ちょっとかわいい

数字に苦手感を持つ自分のような人間にとって・・・
「会計」しかも「異国での会計」なんてものは手を付ける前から無理ゲー感満載です。
「うん、会計士さんに丸投げでいいさ・・・それが一番に違いない」と楽そうな道を選んだ(そして失敗した)のですが・・・実際自分で記帳をしてみると普段の会計処理は

  • 売上の管理
    • 請求書を出す
    • 出した請求書の入金を確認する
  • 経費の管理
    • かかった経費をカテゴリ毎に仕分けして、付加価値税額と共に記帳

のこの2つ。
これらができていれば3ヶ月毎に行わなければならないVAT申告(付加価値税申告)の書類は自動で作成できます。

VAT申告という制度に馴染みがなく、会計士さんでなければできないと思いこんでいたのですが、会計士さんは必須というわけではなく、自分でVAT申告をしている人は割といるようです。
(ただし年に1度に所得税の申告は資産やらローンやら諸々が絡んでややこしいので会計士さんは必須です。
年明けの所得税申告の時期に会計士さんを探すのは至難の業ですので・・・早めに信頼できる会計士さんを見つけることをおすすめします。)

Gekkoのインターフェイスは情報がすごく少ないです。
各機能がアイコンで明確に分かれていて、それぞれの作業ページでの情報や選択肢がとても少なく、極めてシンプルに各作業が完了します。

堅苦しくない、ちょっとゆるい外観も会計処理の憂鬱感を軽減するのに一役買っています。
とにかく「わかりやすくて、使いやすい」。
基本的な知識がない人が簡単に使えつつ概念を理解するソフト、そういう感じです。

腑に落ちる・・・ソフトウェア開発の視点

機能の追加で常に進化していくサービス

制度の変更がなければ「会計ソフト」など、それほど変化はしないものなのかもしれません。
とはいえ、社会インフラ、生活の変化がめざましい中で便利さを追求すると無限にできることはあるのかもしれません。

面白いなと思ったのは、携帯で利用できるアプリを複数にわけて別アプリとして提供していることです。
ついつい1つのサービスは1つのアプリにまとめてアップデートするのが普通、と考えがちですが。

  • COST : 領収書、レシートの写真をとって記帳する
  • HOUR : 業務時間を管理する
  • TRIPS : 通勤や業務のための移動時間、かかった費用を記帳する

これらの機能は個別のモバイルアプリとして追加されてきたものです。

オランダの会計アプリ gekko モバイルアプリ


そしてつい先週、Gekko は Mollie と連携し、決済リンクを請求書メールに掲載して送信できるようになりました。
請求書のメールから銀行やクレジットカードの決済画面を直接立ち上げて、請求書を受け取った側はすぐに支払いができます。
オランダの全銀行をカバーしているといっても過言ではないiDeal (銀行への送金システム)をはじめ、クレジットカード、フランスのCB(Cartes Bancaires)など他のヨーロッパ諸国の主要決済、SEPA、など様々な決済方法が利用できます。
送った決済リンクから入金があれば自動的に会計に記帳されます。

自動的に決まった顧客に決まった金額の決済画面付き請求書を送付するといったサブスクリプション的な請求も登録可能になるそうです。
会計業務ややWEB屋の保守、月極めでコミットするプログラマなど・・・
毎月決まった請求書を出すシーンは割とありそうなことを考えると、請求から入金確認と記帳まで自動でできてしまうというのはとても便利に思えます。

この決済機能付き請求書送付の機能も近いうちにモバイルアプリができるそう。

誰のために何を作るのか、という基本的なこと

自分は当初、Gekko のインターナショナルに使える仕様は数ある会計アプリとの差別化および、国をまたいで仕事をするグローバルなフリーランサーの増加、海外展開を考えた上での戦略的特徴だと思っていたのですが・・・

実際に話を聞いてみると

うーん・・・
実際僕たちにとって多言語、多通貨の機能ってのはそこまで重視してできたものではないんだ。
普通に必要だからつけている機能の一つで。

あくまでも僕たちが作りたいのはまず
”オランダで働くフリーランスが会計業務に煩わされず、自分の業務に専念するための会計アプリ”
であって。

もちろんヨーロッパ内の他の国にも広げていくつもりはあるし、既にスペインに拠点もある・・・けど。
まずは ”国内のフリーランス、小規模事業者にとって役に立つソフトウェアを作る” ことが基本なんだよね。

・・・思っていたよりも地道で地に足のついた返答に。

自分が妙にこのソフトウェアに惹かれる理由がわかったような気がしたのでした。

「実際僕たちのサービスは大きい会社、ECなどの記帳には向かないからね。
あくまでもフリーランス、スモールビジネスのためのサービス、なんだよ」

裾野を広げていくこと、
より大きな顧客を狙うこと、
ついスケールを広げることに目が向いてしまいそうな中で。
自分たちが欲しいサービスをユーザーと一緒に作るという視点をぶらさずに

「シンプル化した上でUXとして体現する能力」
「新しい技術をフレキシブルに取り入れる技術」

をもって最適な仕様を追求していく。
フィードバックを真摯に受け取り、バグ修正や改善要望ができる限りすぐにサービスに反映されるのも、彼らにとっては当然なわけです。

結果、そのユーザー像にしっかりはまる自分のような人間にとっては妙に安心感を覚え、応援すらしたくなるサービスとなっているのかもしれません。

「スモール&スマート」に自信が持てるかどうか

「Gekkoはすごく使いやすいし、フリーランスはもっともっと増えると思う。
そんな中で、銀行に吸収されたり、大手企業に真似されて規模で潰されたりとかそういうことってありえない?」

そういったイヤな質問をした自分ですが

銀行に頼まれたら協力するよ。
潰されない?という心配については…
全くの同業同士ならあるかもしれないけど、そうでなければ協業すると思う。
大きな会社はその規模に合った能力、強み、顧客があって。
僕たちには僕たちの技術とフレキシビリティー、顧客があって。
資本で真似できるものじゃないんだ。

・・・言われてみればそのとおりで。

小さな会社や個人が規模感に臆することなく、自分達の能力と目指すサービスを追求できる。
そしてできるところは規模に関係なく協業しあう。

それは彼らにとっては「ごく自然」なのが伝わってきました。

自分がフリーランスだから
「小さな会社や個人を何がなんでも推奨したい」
そういうわけではないのですが・・・。

大きな組織、特権を持ってしまっている組織でなければ生きにくい、だから皆がこぞってそれらを目指し、ますます自分達にとって有利で小さなものから利益を吸い上げる社会システムを作ることで格差が広がる・・・そうではなくて。
小さな会社や個人がそのままの規模でも自分たちの独自性や能力を発揮して、推進していける。
そんな規模も方向も「多様性」のある社会のほうがきっと色々な人が生きやすく、経済も活性化するのでは?


と、思うわけです。

Gekkoのサービス自体がフリーランスのような存在のために提供されていることと、彼ら自身が小規模ながらもスマート&フレキシブルで、地道でありながらグローバルにもサービス展開していく様子に、なんだか勝手に勇気づけられたのでありました。

いろいろまとめきれずにただ長くなりましたが。。。
スマートではまったくない、ただのスモールです。。。

会計関連についてはTips的なものをいつかまとめようと思います。
オランダで会計処理に困っているフリーランスの方、Gekko おすすめですので、よかったらぜひお試しを。

2019/Jul/16
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