WordPress + ブロックチェーン?? オランダ発のプラグイン、WordProof がなかなか興味深い2019/Jul/03
「仕事ですから」 と言い切って。
今年もWordCamp EU 2019 に参加してきました。
初ベルリン、久々のお一人様旅行が楽しすぎてすっかり当初の目的を忘れそうになりつつも。。。
第一会場のトリを飾ったセッションが自分的に激しく気になる内容だったので、ざっくりまとめと共にご紹介したいと思います。
WordCamp EU 2019 in ベルリン (6/20 – 22) のざっくり所感
各国からコントリビューター、開発者、ユーザーが集まるヨーロッパ最大のWordPressのカンファレンス、WordCamp EU。
パリ、セルビアに続き 2019年の開催地はベルリンでした。
100近い様々な国から集まった参加者数は2734人。
これまでのWordCamp EUの中でも過去最高数だったそう。
3つの主なセッション会場の他、90分 – 3時間にも及ぶ実践的ワークショップが多数あり、技術系からUI、デザイン、コンテンツ、マーケティングと様々な面からWordPressに浸れる2日間(コントリビューターデイを入れると3日間)でした。
技術的な内容や開発者向けの内容もさながら、今年は
「マインド、モチベーションについて」
「SEO」
「コミュニティー運営」「教育」
「グーテンベルクの構造的意味(= コンテンツ構造の重要性の再確認)」
的な内容が特に目についたような気がします。
WordPressをどう開発するのか、システムとして最適化するのか、というフェーズを過ぎて、「コンテンツに注力するためのTips」「モチベーションのありかた」的なソフト面に回帰してきているような印象です。
ワークショップをのぞけば技術的なセッション、デザイン的TipsやUIに関するセッションは極めて少なかったような気がします。
ところどころしか回れていない一個人の所感ですが悪しからず・・・
“From WordPress to blockchain: The future is 100% open source“
が色々な意味で面白かった
第一会場の最終セッションのタイトル。
「・・・WordPressとブロックチェーン?」
一体どういうことなのか?
多言語化のセッションとどちらを見に行くか迷ってこちらにきました。
スピーカーはオランダ人 Sebastiaan van der Lans。
GDPR対応のプラグイン「WP GDPR Compliance」をリリースしているVan Onsから新たに設立された会社のファウンダーです。
眩しいほどの笑顔と明るさで、壇上での挨拶・・・からのなぜか会場全体でのダンスタイム。
一部のノリのよい参加者、怪訝な顔の参加者、様々が交じる中・・・
自己紹介、ボーイフレンドと婚約したことが満面の笑みで報告され、ヒューヒューと盛り上がる会場。
底抜けに明るく屈託のない様子に会場全体がふっと気をゆるす、そんな冒頭です。
セッションの主題は
“From WordPress to blockchain: The future is 100% open source“
の表題のとおり + 彼らの リリースしたばかりのプラグイン WordProof の紹介。
内容をかいつまむと・・・
オープンソースの「善意と透明性」による発展がもたらした恩恵と可能性を振り返りつつ、
便利なサービスの代償として
「ユーザーとサービスの間で仲介役を果たすシステムがしばしば独占的、強固になりすぎている」
「”データ掌握の覇者” がブラックボックスの中で個人情報を自由に利用できてしまう」
状態について説明。
その状況を打開するために透明性が必要とされている・・・改ざんが不可能でオープンソース同様に透明性のあるデータ運用としてのブロックチェーンの可能性の話、
と続きます。
なかなかに壮大な話です。
でもなんだか既視感ある・・・と思ったのですが・・・
「データ掌握の覇者」を暴走させないで、個人が自分の情報を扱う権利を取り戻すという思想・・・これは GDPR(General Data Protection Regulation)の根本的思想に他なりません。
GDPR:ものすごくざっくり書くと・・・EU住民の個人情報を保護するための法。
EU住民の個人情報を承諾なく利用したり移動したり、適切に扱わなかった場合、およびデータの削除や開示の要求に応じなかった場合、
「全世界の売上のうちの2% もしくは 1000万ユーロ(12億以上)のどちらか高いほう」
もしくは
「全世界の売上のうちの4% もしくは 2000万ユーロ(24億以上)のどちらか高いほう」
という意味のわからない額の罰金が課されるかもしれない国際法です。
個人情報を扱う企業に
「勝手に個人情報を好き放題して商売しようとしたら・・・どうなるかわかってるやろなワレ」
とドスをきかす意味合いもありますが、
個人情報および社会インフラに必要な情報を「民主主義」「個人の尊重」の名の下に透明性を持つ形で電子化して電子国家化するというEUの未来の展望があるのかと自分は勝手に予測しています。
ブロックチェーンの持つ本来の力や脆弱性がまだまだよくわからない中で(自分もほぼわかっていない)、単なるマネーゲームでないとははっきり言い切れなくはありますが・・・
オランダは金融インフラの面で革新的、無謀とも見える取り組みを行いながらも、
後にEU全体で使える同様の仕組みを整えていくという動きがあったりと
なかなかアグレッシブに先を走っています。
そんなオランダの姿を横目で追っている中で、
「WordPress +ブロックチェーン」の提案は意外でありつつも時代に合った新しさであり、浸透すると先駆者のビジネスメリットは莫大に見えます。
「・・・なるほどオランダの会社らしいや」と妙に納得したわけです。
それにしても。
Googleさんが最大規模のスポンサーとして名を連ねる中で・・・
GAFAその他を名指しして「Don’t be Evil」(邪悪になるな)とかつてのGoogleの行動規範にあった一文を起用しつつ明るく講演するのはなかなかハラハラしつつも痛快だったりします。
オープンソースの第一線として「誰でもパブリッシャーになれる」環境、および貢献し合うことで皆が恩恵を受けるエコシステムを確立してきたWordPress。
そして「個人の権利、市民の権利」を遵守するという理念のもとで法整備に動くEU。
「開かれた民主主義」への共感が大前提としてある中で、
WordCamp EU ならではのセッションかもなあと一人で腑に落ちていた次第です。
ブロックチェーン上に投稿情報を記録する “WordProof” プラグインを入れてみた
そんなわけで。
個人的には激しく興味深かったこのセッションなのですが、セッションの結局の本題ともいえるプラグインをこのブログにも利用してみることにしました。
WordProof とは?
公式サイト: https://wordproof.io
ブログのURL、内容、投稿日、投稿者、編集履歴などの情報を改ざん・消去が不可能と言われるブロックチェーン上に記録するタイムスタンプのプラグインです。
情報の格納先として利用するブロックチェーンは EOS もしくは Telos。
国内の仮想通貨交換所ではこれらは取り扱われていないため情報が少ないらしいのですが・・・
処理能力が高く、取引手数料が無料ということから、アプリケーション、ソフトウェアのプラットフォームとしての普及が注目されているらしいです。
プラグインを実際に入れてみた・・・けどよくわからない点は多い
利用はフリープランだと無料、設定も簡単、と書いてあるのですが・・・
利用には仮想通貨EOSもしくはTelosのアカウント開設とウォレットと呼ばれるソフトウェア Scatterのインストールが必要で。
仮想通貨そのものを購入する必要はないのですが、TelosではなくEOSを使いたい場合、アカウント開設料が必要となります。
プラグインの導入画面のSetup手順に従って
- 12文字の小文字英数字からなる仮想通貨のアカウントを決めて、
- アカウント名から発行されるキー(4種類)をバックアップ(メモ)しておき、
- Scatterをインストール
- Scatterに先程メモしたキーを入れてアカウントを紐付ける
- Scatterを立ち上げた状態のPCでWordPressの管理画面にアクセスするとタイムスタンプ機能が使えるようになる
と、簡単・・・なはずなのですが・・・簡単なのか・・・?
初めてブロックチェーンに触れる初心者としては
「ウォレットて何? (← 仮想通貨をデバイスで管理するソフトウェア)」
「え、仮想通貨買わなあかんの? (←不要:ただしEOSのアカウント開設は有料。自分は $12.35 でした)」
と不明点が多すぎてセッティングになんとも時間がかかりました。
なぜかアカウント開設が有料のEOSを選んでしまったせいもあるのですが・・・
セッティングが済んでしまえば、投稿、固定ページの編集画面でタイムスタンプを押す(投稿情報を記録させる)ことができます。
この記事の一番下にタイムスタンプを表示するリンクがありますのでご参考まで。
このタイムスタンプ、投稿時にも記録することができますし、
記事の変更時、もしくは後からでも記録することができます。
Proof timeの箇所が最終更新日時となっているのが・・・データベース依存だといじれてしまうのでまずいのでは?という気もするのですが。(ここは現在問い合わせ中)
タイムスタンプ・・・? 今のところ一体何の役に立つのか・・・と首をひねりつつも。
もしこのブログ内容が盗用、コピーされるようなことがあれば、情報をいつ公開しているのか、という証明は役に立つ・・・のかもしれません。
自分のサイトがどうかはさておき。
蔓延するフェイクニュース、情報のコピー・・・
これらの対抗策として「改ざんが不可能なタイムスタンプ」が一般的に重視されるようになれば、研究者や、こつこつと自前で情報を発信している人にとっては欠かせないものになるでしょうし、重要情報がなぜか消えるブラックボックス的社会の「透明化」を少しは後押しするかもしれない・・・
そう考えるとタイムスタンプ、なかなかにあなどれないとも思うわけです。
「フェイクではないという自信の証ともいえるタイムスタンプ。
これがないものは信用ある情報とは見なされなくなる」
「いずれタイムスタンプが検索結果に影響するようになる」
そんな未来が果たして来るのかどうか・・・なんともわかりませんが。
面白そうなので動向を見守ってみようと思います。
【補足】
当ブログはWordPressの爆速プラットフォーム Shifter を利用している関連で・・・
実際のところそのままでは WordProof は正しく動かないのですが、Shifter チームに無理をお願いして m(_ _)m、一部調整済のプラグインを利用して実装しています。
利用に関しては Shifter – WordProof 間で現在(2019/7/2現在) 調整中とのことです。
https://www.getshifter.io/japanese/