静寂の月曜日:ユトレヒトでのトラム銃撃事件の後で2019/Mar/20
1日前の日曜日に小さな平和(?)を実感していたのとはうって変わって。
昨日の月曜日はオランダ全体が妙な静けさに包まれていたように思います。
ユトレヒトの中心に近いトラム車内で銃撃があり、死傷者が出ているようだというニュースが入ったのはお昼頃。
いつか大きなテロ事件が起こされてもおかしくはない。
考えたくはないけれど、うっすらとそんな覚悟はしていました。
どこにいても絶対に安心とは言えないけれど。
移民をはじめ異なる人種の受け入れに寛容なこと、
大きな事件が少ないが故により警戒が薄くなってしまうかもしれないこと、
ニュージーランドのクライストチャーチ事件の直後であっただけに
オランダの寛容さが裏目に出たと言われるような、そんな事件になってしまうのかもしれない・・・
そんな嫌な憶測がよぎります。
午後3時、容疑者がいまだ捕まっていない中でチビを迎えに学校へ向かいました。
ここはユトレヒトからは電車で1時間の距離ですが、月曜日だからなのかもしれないけれど(オランダは日曜日だけではなく月曜もお休みの店が多い)街全体がひっそりとしていて人の気配が格段に少ない気がします。
親の不穏な気持ちをよそに・・・
何も知らないチビは学校近くのクラスメートの家へ遊びにいく約束をとりつけてウキウキしています。
夕方出直してお家まで迎えにいったのですが、夕方もやはり街全体がシンとしていて奇妙な感じではありました。
容疑者が逮捕されたのは夕方遅く。
ユトレヒトの厳戒体制は解かれたものの、依然として街は静かでした。
天気のよい日は特に人々の喧騒が耳に入るのですが、昨日においては夕方も夜も通行人の気配を全く感じませんでした。
3人の民間人が亡くなっていることと。
治安も穏やかなユトレヒト、街中のトラム車内、という誰にとっても身近な場所で事件が起きたこと。
悲しみと不安に国中が包まれていたと言っても間違いではないかもしれません。
テロなのか個人的恨みなどによるものなのかは現時点ではまだ不明ですが。
容疑者がトルコ人(もしくはトルコからの移民)というのもより複雑な感情を想起させるのかもしれません。
オランダは1970年代に労働政策としてトルコやモロッコから大量の移民を誘致してきた歴史があります。
労働力として都合よく働かせるために受け入れて、社会のヒエラルキーの最下層に閉じ込めておくという選択肢もあったのかもしれませんが、オランダはそうしていません。
いつか「同胞」となる「住民・隣人」として平等に迎え入れる努力を積極的に行ってきていることは、万人に開かれた教育環境や、貧困者のサポート、多種多様な人種が入り乱れる社会に見て取れます。
失業率が低下し続けていることもあってか「移民」についてはドイツほど問題視されてはいないものの・・・
治安の悪化や社会保障費の膨らむ理由の1つとして移民排斥を掲げる政党もあります。
思想の自由、宗教、教育の自由を保障しているが故に、明らかに差別を含む風習や思想、危険な思想に繋がりそうな教育も排斥はできないというジレンマもあります。
様々な思い、考え方がある中でも、国としては積極的な努力を投じて「寛容で多様性のある社会」の実現を目指してきた中で。
凶悪な事件をきっかけにそんな近年の歴史は反故にされ、もう隣人となっている人同士で「人種」を理由に憎しみや猜疑心を持ち排斥するようになる・・・そんな未来がないとは言えない。
テロそのものへの不安だけではなく。
悲しみと共に 「思想の変化」への不安を感じているのは、異邦人の一人である自分だけではないように思います。
そんな中で、事件のすぐ後に公表された王室からのメッセージが自分的に心に響いたので、シェアしておこうと思います。
私たちはユトレヒトでの攻撃で3人の方が亡くなり、
重傷を負った人がいるという事実に深く悲しんでいます。
私たちは被害者とその家族に深く共感します。
このような暴力的な行為を断固拒否します。
人々が安全に感じることができ、自由と寛容に包まれた社会のために団結し、一緒に立ち向かいましょう。
現在影響を受けている人々のために働いているすべての医療提供者に感謝します。
私たちの思いはユトレヒトの住民の方々と共にあります。
– Koning Willem-Alexander en Koningin Máxima
via instagram “koninklijkhuis”