「女子なのにすごい」はナンセンスだと思いながらも。 オランダで見る女子ワールドカップ2019。2019/Jul/10
日曜日、2019年のFIFA女子ワールドカップが幕を閉じました。
前回の2015年に初出場を果たしたオランダ代表、今回の出場は2度目です。
アーセナルやマンチェスター・ユナイテッド、バイエルン・ミュンヘンなど世界の強豪チームに所属するメンバーが多数揃ったオランダチーム。
世界的な注目度も高かったようですが、国内の盛り上がり感は相当なものでした。
スーパー、銀行、小売店、大手がこぞってキャンペーンを展開
→ 街中で見かけるオレンジライオンの選手たち(Oranje Leeuwin)
女子ワールドカップの筆頭スポンサーは最大手銀行の ING。
厳しい練習風景と躍動的な一瞬、ふと見せるリラックスした表情などが入り交じるロックなCMをあちこちで目にしました。
最大手スーパーのAlbert Heijnは選手のイラストポスターを無料配布。
どこの街にも必ずある日用品小売店 Blokker は選手それぞれを模したフットボールゲームの人形をキャンペーンで配布。
ここ2ヶ月ほど、シャンプーやピーナツバター、携帯電話キャリアなど、様々な商品やキャンペーン、店頭、動画でオレンジのユニフォームの選手達:Oranje Leeuwinを見かけない日はないほどでした。
やはりアメリカ強し。涙をのんだ決勝戦・・・ いつのまにかオランダを本気応援している自分たち
接戦の末になかばラッキー?で勝利したようにも見える対日本戦を経て、(これについては何人ものオランダ人に「日本が勝っていて当然の試合だった」と言われた)
準決勝の対スウェーデン。
0 – 0 と拮抗し、延長線でもぎとった勝利には国中が湧き、翌日の新聞という新聞一面がオレンジの写真と見出しで飾られました。
決勝戦は・・・やはりアメリカの安定した攻撃力とスタミナ、オランダエースへの固いマークによってゴールのチャンスをなかなか得られない中、フェイネンダールの数々のスーパーセーブもかなわず 2-0 で敗退します。
多くの家々、パブリックビューイングの現場からため息と、そして健闘を称える拍手が聞こえてくるようなそんな日曜日の夕方でした。
スポーツに興味がほとんどない自分なのですが・・・
あちこちで選手の姿やCMを目にしているうちに、なんとなく主要選手の名前がわかるようになり。
この大舞台に出るまでの長い長い道のりや、準決勝進出ということだけでも歴史的にすごいこと、などがわかってきます。
日本人のくせにオランダ人の意気込みに妙に共感を覚えつつ試合を見てみると、実際彼女達のプレーには迫力と素晴らしいシーンがいくつもあって面白く。
(日本戦はやっぱりちょっと納得いかない感があるものの)
いい年をして今更・・・ですがスポーツの面白さを実感したような気がするのでした。
典型的日本人だからなのか・・・?
いちいち浮かぶ「女子なのにすごい」という感情はいったいなんなんだ。
オランダにとって女子サッカーの躍進は史上初という快挙、なのはわかっているものの。
様々な業界の最大手がこぞってチームを応援し、ヒーローとして(← ヒロインというべきかもしれないけどいまいちイメージが合わない)国中でメンバー達が認知されているシーンを見ていると、
「女子なのにすごい」
と思ってしまう自分がいたりします。
サッカーが確かにもともとは男性のスポーツだとしても。
女子なのに、というのは明らかに卑屈な見方、言い方であって。
でもどうしても、
「女子サッカーなのにこんなに注目されてるなんて」
「女子サッカーなのにこんなに多くのCMに起用されてるなんて」
「女子サッカーなのにこんなに多くの人が応援しているなんて」
いちいち驚いている自分を見れば見るほど・・・
「しょせん女子でしょ」と勝手に「男子のフィールドで無理をしている、ゆえにつまらない」と決めつけるような先入観を持ってしまっていること、
そして
世界に挑戦して戦う選手たちを応援する。
極めてシンプルなことのはずなのですが・・・
ジェンダーうんぬん関係なく、それがさらっと国をあげて行われていることに驚いている自分の了見の狭さ、「女性が活躍していなくて当たり前」な社会に慣れきっていること、にがっくり肩を落とすのであります。
ジェンダーによる格差や差別のことを語ろうとすると、
「じゃあ何もかも同じようにするべきなのか」
「喧嘩したら勝てるのか」的な
「平等なようで平等でない」不毛な議論になりそうで面倒だなと思うのに加え・・・
オランダにはジェンダー格差は存在しないのかというと、そうでもないようにも思います。
ただ少なくとも、この「ジェンダー格差」を払拭する意味も込めているように見えるほど、オランダ国内が選手達の活躍に注目し、応援するムードに満ちていて驚かされたことは書いておきたいと思った次第です。
女子だからよけいに力をいれて応援する、というのも変な話だとは思うのですが・・・
スポーツをする人だけではなく、理不尽なルールや差別、固定概念に違和感を感じる、そしてそれらと戦う人に
「夢を変えるな。世界を変えろ」
のメッセージで作られた、ナイキのFIFA女子ワールドカップ用CMをぜひ見てほしいと思いつつ。
7/10 記事修正しました(対スウェーデン戦のスコア間違ってました m(_ _)m)
INGのCM動画も追加しています。